集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第171夜「十三夜と皆既月食」(2014年10月3日号)



 深まると言うほどではありませんが、いよいよ秋らしくなってきました。運動会は最近必ずしも秋の行事ではなくなってきましたが、秋はスポーツには絶好の季節です。でもそれと共にスターウォッチングの季節でもあります。なぜなら蚊に悩まされることも減り、明け方でも真冬のそれと違ってさほど寒くは無いからです。冬の一等星に溢れる空とは違って、それが少ない秋の星空は、アンドロメダ大銀河やすばる、ヒアデス星団など、知る人ぞ知る星空散策の名所に溢れてはいるのですが、比較的暗い星ばかりです。

 ですが、月は誰もが知る天体。というより知らない人はいない天体です。だから今週はそれを楽しみましょう。6日が旧暦の九月十三夜。満月二日前ですから、ちょっとその東側が欠けていることはお判りですか。でも、ほとんど円いですから、昔の人は、特に日本人はそれを楽しみました。日本人は、完全な円形を好みそのため円い月餅を食した中国人とは違って、なんとなく不完全な十三夜月を好んだと言われます。なので、後の月は日本で誕生した(後醍醐天皇が創ったと言われています)観月習慣となりました。日本独自のものですので、ぜひいつまでも残したいものですね。

 そして、2日後の10月8日(水)に月は満月となり、この夜は、皆既月食! 夜空でも運動会が行われることになります。「地球の影」と「月」が選手です。後者の方が快速ランナーなので、影を追い越して行きます。なぜなら、地球の影は地球と同様、一年をかけて星空を一周しますが、月はたった27日半で一周してしまうからです。なので、月はその東縁から影内に進入し、東縁が隠れて皆既となり、しばらくすると東縁から出現してやがて西縁が現れ、終了します。こうして月が影を追い抜いたのです。

 欠け始め、すなわち月の東縁が影内に進入するのが、日本時間で18時14.5分(食の始まり)。そして、皆既の始まりが19時24.6分、皆既の終わりが20時24.5分、食の終わりが21時34.7分です。遅い時間ではないので、ご家族皆さんでお楽しみください。

※10月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。