第170夜「昼間の土星食」(2014年9月26日号)
例年うっとうしい天気が続く今日この頃。今年は、台風16号から変わった温帯低気圧一過(?)で、週末は全国的に好天に恵まれそうですが、この28日だけは、正午過ぎの数時間、お天気の神様…そんな方っていましたっけ(?)…ともかく誰でも良いから、快晴をお願いしたいものです。なぜなら、珍しい天文現象の一つ“土星食”が日本で見えるからです。ただし青空の中に明るさが0.4等しかなくて、肉眼では完璧に無理、パワフルな双眼鏡や望遠鏡を使っても、機器の扱いに相当熟練した方でなければ観察はおろか確認すら無理だろうと思われる現象で、普通の方にはオススメできない天体現象です。
しかしながら、現象そのものは数十年に一度クラスのもので、計算上では前回が2007年6月19日の日没前、次回が2024年7月25日の日出後になります。ただ、どちらも今回同様日中に起こるので、好条件はありません。暗い空の中で起こるのは、2037年2月2日の明け方と同年3月28日の夕方、そして最も好条件なのが2048年6月26日~27日の真夜中に起こりますが、いずれも月がまん丸に近く、今回のように暗い三日月ではありません。月の暗い縁に隠され、突然消えるというような状況とは異なり、しかも月が眩しいということで、これも悪条件。第一、あと30数年生きなければなりません。
東京では28日12時11分20秒に環の西側が月の暗い縁に隠され始め、11分45秒に本体西側が、12分26秒に本体東側が、12分47秒に環の東側が隠れます。そして、13時32分31秒に環の西側が、33分0秒に本体西側が、33分46秒に本体東側が、34分15秒に環の東側が月の明るい縁から出現します。観測は非常に困難ですが、たとえばお近くの科学館で観望会が開かれるなど、チャンスに恵まれたらぜひご覧ください。私もこれまでに一度しか見たことはなく、一生に一度は大げさですが、大変に珍しい現象といえます。
日中の観測が出来なかったら、宵空に月と土星が並んでいる姿をご覧になって、この次を目指そうと決心してください。“天文は希望”ですから!
※9月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。