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あつぼし見上げて夜話

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第175夜「座布団の脇に蒲鉾が」(2014年10月31日号)



 本雑文118で座布団を、154で蒲鉾をご紹介しました。そこでもお話したとおり、座布団は秋の大四角の、蒲鉾は上弦の月の、筆者作の洒落(駄洒落)ですが、本日はそれが両方ともご覧になれます。

 日没17時ちょっと前からほぼ1時間後には、薄明(黄昏)もずっと薄れますが、その頃、南空高度40度ほどに蒲鉾月が、東空50度ほどに座布団が引っかかっています。というより、西空のベガ(織女星)とアルタイル(牽牛星)を結ぶ線の延長上に蒲鉾月、夏の大三角のほぼ真東に座布団がと申し上げた方が良いかも知れません。

 本当の蒲鉾月は本日の11時48分ですから、月出前で日本では見ることができません。上弦が太陽から直角に離れた瞬間ですから、その時刻で見ることができないのは自明の理です。なので、31日宵空の蒲鉾は、ちょっと太めのそれになっています。

 この日のお夕食に蒲鉾があったら、お行儀良く戴きましょう。でないと、座布団と一緒に空に舞い上がってしまいますよ。まぁそれはともかく、この際座布団に対する蒲鉾の動きにご注目戴きましょう。これも何度も申し上げてきましたが、見るのはタダです。

 月の軌道(白道)が座布団から南にかなりそれているので、何年待っても蒲鉾が座布団の上に転がることはありませんが、これから夜ごとに蒲鉾は太っていきながら、東へ東へと動いていき、座布団への最接近は来月3日及び4日(7日が満月)になります。

 来週末1日には、日出時に水星が最大高度(東京で17度)になります。太陽近くを公転しているので、見るチャンスが少ない水星ですから、挑戦してみませんか。なにしろ、コペルニクスもケプラーもガリレオもニュートンも、公式には肉眼で見たという記録がありませんから(これらの人々が住んでいた場所が、日本よりも一般的に高緯度だったのが原因です)。もしご覧になったら、みなさんはこれらの大偉人たちを超えられるわけですよ。

※10月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。