集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第176夜「冬ですが熱い話」(2014年11月7日号)



 7日は立冬です。日本では今日から冬(暦上)になります。今晩は満月なので、月明かりがあるため、夜はさほど寒く感じられないかも知れませんが、冬なのです。

 夜の9時を回る頃には、東の空に冬の星座を代表するオリオンが登場します。それと戦う牡牛も上っています。ただし、月明かりが邪魔しますので、その戦いをゆっくりと眺めるのは、数日間はダメですね。

 月は8日に牡牛の頭部を成すヒヤデス星団付近にあって、その一部を食(隠すこと)しています。ですが、やっぱり月明かりが明るいので、それを観測するのは容易ではありません。1か月後の12月5~6日にもヒヤデス星団食が起こりますが、これも月明かりのためほぼ絶望です。コンチクショウ、月明かりメ!ですね。

 でも、江戸時代の人にとっては、月明かりは無くてはならないものでした。街灯がなかったためです。盆踊り(七月十五夜に行われた)が出来たのも月明かりのおかげです。

 また、主にアラビアに住むイスラム教の人々が、昔ラクダで旅が出来たのは、満月前後の夜でした。昼間は暑くて、とてもとても。世界各地の遊牧民も狩猟民もそうでした。だから、月はとっても大切な、行く手を守る守り神だったのです。日光菩薩様は昼間の、月光菩薩様は夜間のそれでした。

 そこへ行くと、星の神様の役割は大したことなさそうですね。中には、戦の神とか疫病神とか。ある意味全部、人間が想像で作り上げたものなのでしょう。

 現代は、火星移住を実行しようとしている人々がいるくらいです。戦の神の星に乗り込もう、いや乗り込まねば、地上は食糧難などで住めない場所になるかも知れないという切実な問題が山積しているのですから、仕方ないですね。みなさんすでにご存じかも知れませんが、火星移住は早ければ2020年代半ばに、遅くとも30年代には実行される予定です。大いに熱く期待しましょう!

※11月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。