第177夜「今年のしし群」(2014年11月14日号)
第173話でもお話したとおり、今年はおそらく今度の18日未明にしし座流星群が極大となる予定です。ですが、さほど期待されていない極大で、おそらくピーク時1時間当たり数十でしょう。ただし、私のそれは都会人の受け売りですから、あまり影響されてはいけません。やっぱり最高の空の条件下でご自分の目で確認すべきです。
それでも明確に言えることは、2001年に記録された1時間に数千~一万超という驚異的な出現は無いでしょう。ダストトレイルと呼ばれる母彗星(しし群の場合はテンペル彗星)が供給する塵の帯内への地球の進入が甘いことと、塵の塊が母彗星の軌道運動と共に地球から離れてしまったことが主な原因です。
かくして今年のしし群は期待されず、この次のピークの2033年頃と2066年頃、そして最も期待されている2099年頃のそれにご期待ください。天文は夢ですから。人間の脳みその細胞が全滅する120歳まで、あなたは生きられますよ。必ずではありませんが・・・。
今年は未明にしし群が極大になる午前2時頃に東の空に、月齢25の月が上ってきます。でもその程度での月明は、流星の計数観測にはあまり影響しませんから、寒さ対策に十分留意して、しし群の観測に臨んでください。
そして出来たらで結構ですから、前の晩17日の宵の口に、ペルセウス座の有名な食変光星アルゴルの主極小(暗い伴星が明るい主星の前を通過し、全体として普段の2.2等に比べて3.5等まで暗くなる)が起こるので、そちらもご覧ください。申し訳ありませんが、私はそちらの方に全力を尽くします。なぜかというと、この49年以上その観測を410回以上続けていますので。
天文現象は決して一種類だけではありません。流星・日月食・望遠鏡による惑星観測だけでなく、何十何百何千種類、いえいえ、星の数ほどあります。ですから楽しいのです。夜の団欒を外れてまでもとは申しませんが、暇だったらぜひ屋外で星空を見上げてください。
※11月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。