集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第210夜「アンパン月」(2015年7月3日号)



 このところ「梅雨もいよいよ・・・」と書き出しが決まってしまいましたが、第210夜も「梅雨もいよいよ終盤になりました」で始めたいと思います。早く梅雨が明けて星空を満喫したいものですね。

 それはさておき、晴れていれば夕方の西空にはしし座の一等星レグルスの近くに、水星、木星それに金星がいて賑やかなはずです。20時半近くの反対側の東空には、夏の大三角が姿を見せています。あいにく3日には満月過ぎの月が煌々と光っているので、暗い星はほとんど姿を消しています。もちろん天の川も消えています。

 さて、今晩は月についてお話させてください。東京では7月3日19時46分、4日20時32分、5日21時16分に月が出てきます。日本で法律的には、日出と日没が太陽の上縁が地平線にかかったとき、月出と月没が月の中心が地平線にかかったときと決められています。まぁそれはどうでもいいこと。 

 今晩の話題は、月が地平線上に現れたときのことです。びっくりするほど大きく見えませんか? またアンパンを横から見たときのように、潰れて見えませんか。その表現が日本人らしくおまんじゅうでも良いのですが、私の孫娘がアンパンマンの大ファンなので、私はそれをアンパン月と命名しました。

 でも考えてみれば、変ですよね。30分もしないうちに上下に膨れてきて、丸くなるのですから。実は月没時も日出時も日没時も同様なことが起こります。月の場合、三日月でも半月でも潰れることが起こります。太陽の場合はもっと変な形、まるでダルマさんの様になることもあって、ダルマ太陽と呼ばれます。

 もちろん月も太陽も潰れるわけはなく、大気による光の屈折現象によります。では、大きく見えるのは? 錯視と呼ばれ、今では心理学者や神経生理学者の研究対象になっている面白い問題なのです。

※7月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。