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あつぼし見上げて夜話

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第208夜「ラニアケア超銀河団①」(2015年6月19日号)



 雑節という暦用語の中で、今月11日は入梅でした。要するに梅雨入りですが、毎年この日気象庁が梅雨入りを宣言するわけでも、この日からじめじめ天気が続くようになるわけでもありません。あくまでも暦の上での一区切りとされ、目安です。

 暦の上での入梅は、太陽が春分点から80度地点を通過するときだと決められていますが、今年はそれが11日10時半頃でした。これは天文計算できっちりと決めることが出来ます。このとき、太陽は冬の天の川に浸るオリオンの頭上にありました。

 オリオンのほぼ反対側には、私には化け物にしか見えませんが、あの半人半馬の射手(いて)がいます。さて、実はいて座にはもう一つ、黄経270度・黃緯0度という点があります。この点の正反対となる黄経90度・黃緯0度点はオリオン座とおうし座とふたご座の境界付近にあります。一方、いて座内には銀経0度・銀緯0度(銀河中心方向)が、オリオン座付近には銀経180度・銀緯0度(銀河対中心方向)という点があります。

 何のことを申し上げているかというと、銀河系=天の川銀河(私は余り使いたくない言葉)の中心がいて座にあるということです。みなさんには実感がない時代だとは思いますが、第一次世界大戦開戦時には、私たちは銀河系の中心にいると思われていました。ですが、その終戦時には中心を去ることになりました。もちろん実際にサヨナラしたわけではなく、太陽系が中心に位置しないことが判ったと言うことなのですが・・・。

 実は昨年、私たちの銀河系がラニアケア超銀河団という直径5億光年・銀河数10万のとんでもない巨大銀河団の片田舎にいることも判りました。つまりみなさんの住所は、宇宙内/ラニアケア超銀河団/局部銀河群/銀河系/オリオン腕内側/太陽系/ハビタブルゾーン/地球/・・・となるのです。

 こんなことを考えていると、もう梅雨入りだとか何とか・・・ではなくなりますね。

※6月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。