第229夜「おうし座流星群」(2015年11月13日号)
実は、1週間前の6日頃、といっても活動期間が長いため毎年10月上旬から注目しなければならないものですが、おうし座南群と呼ばれる流星群がピークでした。
北群を含め、1時間あたり十数個と、8月のペルセウス群や12月のふたご群には及びませんが、火球と呼ばれる明るい流星が多く、スピードが極度にのろいことで有名な流星群です。これぞ流星です!
そのうちの北群が、予報では新月直後の13日にピークを迎えますが、実際は数日ずれる可能性があります。流星塵塊が木星と共鳴関係にあることから、2005年に火球が大出現しましたが、今年はそれを上回るという予報が出されているので、今年は南北両群共に大注目です。
この群には、地球が塵帯中心を通り抜ける3000年ごとの活動周期があるとも言われ、更にキリストの誕生や、ストーンヘンジが最初に造られた時代に、おうし群の活動ピークがあったという説もあります。母彗星が青銅器時代に分裂したことが、肥沃な三日月地帯の崩壊を招いたと考える学者もいます。それはその時代に出来たとされるイラクの巨大隕石クレーターがその証拠であるそうです。
更に更に、この出来事からギルガメシュ伝説が生まれたと言う壮大な話までもあります。
同流星群の母彗星エンケは、今からなんと2万年も前に太陽系に進入しました。と言うわけで、過去2万年間に訪れた1つの巨大彗星が、おうし座流星物質流の主体となったそうです。
いかがですか、たった1mmにもみたないちっぽけな流星たちのお話が、とんでもなく、いや飛んでいる、ばかでかいお話になりました。流星の話は、科学的な意味でもとてもロマンチックですね!
今月18日未明には、しし座流星群のピークもあります。こちらもその時刻には月明かりが無く、観測条件は最高です。蚊取り線香はもう不要ですが、冷えだけには十分気をつけて観望に臨んでください。頑張って!
※11月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。