第233夜「アルゴル・キャンペーン②」(2015年12月11日号)
11日が新月なので、ここしばらくは暗い夜空の中に多数の星が楽しめます。残念ながら、金星などの明るい惑星は宵空に一つもありません。水星だけはあることはありますが、日没後すぐに没してしまうので、無いことにしましょう。
ただし、明け方の東空は賑やかですよ、高い方から木星・火星・金星、そして黎明が見え始める午前6時過ぎに土星が加わります。金星が明けの明星で、木星は夜中の明星です。
ついでに申し上げてナンですが、来年1月9日の昼間(勿論近所にある太陽に注意!)の金星と土星の接近(たった5分角)は見物ですよ(見えればですが)。
ともかく明け方早起きして四大惑星のそろい踏みをお楽しみになることもオススメですが、それより先週申し上げたように、今週はぜひアルゴルを御覧ください。
というのは、この星が、現在93光年(従って北斗七星より若干遠い)の距離にありますが、現在の測定データによれば、約730万年前に太陽からたった9.8光年の地点を通過したことが判ります。そのときの等級は、-3等以上だったそうです。つまり、現在もっとも明るいとされる恒星シリウスより5倍以上の明るさで輝いていたことになるからです。金星よりは暗いですが、木星よりは明るかったことになります。
そればかりでなく、現在食連星として主星Aの周囲を2日21時間で公転している暗いB星が、どうやらその頃は主星で明るかったと推定されています。つまり、主客交代したワケです。これを学者はアルゴル・パラドックスと呼んでいます。だから、これまでの間に主星が爆発して伴星になり、それまでの伴星が主星からの放出物をキャッチして重くなり、主星になってしまったというわけです。
本当に一見静かそうな宇宙では、実に様々なことが起こっているのですね。いつ起こるかは見ていなければ判りません。どうぞみなさん、どんな天体でも良いから御覧ください。
※12月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。