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あつぼし見上げて夜話

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第234夜「アリと月」(2015年12月18日号)



 18日の晩は、夜20時頃みなみのうお座の白っぽい最輝星フォーマルハウトが南南西の空に輝いています。固有名は「魚の口」そのものずばりで、星座絵では魚の口の位置にあります。ですが、なぜか魚の絵は上下が逆さです。

 全能の神、ということは無理難題何でもできる神様の内でも何でも可能な第一級の神様ゼウスが、地上から掠って天国に連れ帰り、なんと酒汲みボーイにしてしまったガニメデスという名前の美少年が、悔しかったのか、酒壺を逆さまにして全部流してしまったそうです。その流れていった先端に、酒を口にする魚がいたそうで、どうもその魚は酒に酔っぱらってしまったよう・・・という次第。

 ところで、アリは酒に酔っぱらうでしょうか。そんなこと、とてもアリそうもありませんが、実は100年ほど前にこんな観察をした人がいます。働きアリが月明かりの夜、まっすぐに列をなして歩いていました。いわゆるアリの行列。月が雲に隠れた途端、突然方向を見失い、列を乱してしまったそうです。

 アリが見る月とはどんな姿をしているのか私は知りませんが、その明かりに反応し方向を見出していることは確かです。渡り鳥は月を見て渡ると言いますし、私も僅かながらも生物時計に関心を持っています。もちろん生物学的にではなく、天文学的にですが・・・。

 昼間よく見かけるアリの行列ですが、私も1度だけ月明かりの深夜変光星の観測中に、見かけたことがあります。何でこんな時間にとは思ったのですが、それ以上突っ込むことはありませんでした。今思えば誠に残念!

 寒くて人間は震え上がる今の時期は、アリたちにとっても冬ごもりに大変ですから観察も大変ですが、万が一暖かければこれから一週間、18日が(フォーマルハウトの真上で)上弦、25日が満月なので挑戦してみませんか。

 ところで一週間と言えば、人間の活動周期の一つ。新月から上弦、上弦から満月、満月から下弦、下弦から新月と人間も月の満ち欠けに支配されているのでしょうか?

※12月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。