第28夜「シリウス登場」(2012年1月6日号)
新年最初の「見上げて夜話」です。今年もよろしくお願いします。
寒い日が続きますね。昔ある時、プラネタリウムで小学生に質問しました。「冬はなぜ寒いのでしょう?」。小学生「決まっているじゃない、太陽が遠くなるからさ」。私「ブブー」。小学生「えっ」。私「冬は太陽が近くなります」。小学生「ウッソー」。毎年ブレはありますが、少なくともこの30年間では、1月2日から5日までのどこかで太陽がもっとも近くなります。これは近日点通過と言って、地球と太陽の距離が、およそ1億4700万kmになります。反対に毎年7月3日から7日までのどこかで太陽と地球との距離がもっとも離れて(遠日点通過)、およそ1億5200万kmにまで遠ざかります。意外でした? これは、地球の公転軌道が真円ではないから起こる現象ですね。
でも、今年の初めごろの夕方は、金星が一番星として南西の空を飾り、頭上には金星に次ぐ明るさを誇る木星が輝いているので、なんだかちょっと暖かく感じるかもしれません。おまけに来週半ばまでは月も加わり、冬の一等星たちも賑やかに輝いています。
中でも、おおいぬ座のシリウスは「焼き焦がすもの」という意味を持ち、炎のような赤い色ではありませんが、南の空をジリジリと照らしてくれます。
ところで、最新型のプラネタリウムは凄い力を持っていますよ。たとえば、地球を離れることができるのです。星の見方も変わります。地球から見た星座は、多かれ少なかれ形が変わり、とんでもない形の星座ができ上がることもあります。占星術はどうなるのでしょう? 天動説とか地動説とかの話題も、もはや地球上のローカルな話となって、まったく新しい星空を楽しむことができます。
例えばシリウスに行くと、夜空で一番明るい星は、たったの5.2光年の距離に輝くこいぬ座のプロキオンになり、地球から見たシリウスより明るく見えるはず。太陽も8.7光年の距離で、1等星として輝いて、ヘルクレス座方向に見え、わし座のアルタイル(彦星)の近くに見えるはず。いまやそんなようすが見られるようになったのですね。天文学も進歩はもちろん、プラネタリウムの性能の向上にも、眼を見張るものがあります。
※1月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。