集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第31夜「火星が接近しつつあります」(2012年1月27日号)



 大寒の時季、読んで字のごとしで今が一年のうちで一番寒い季節です。みなさんいかがお過ごしですか。日本列島に大寒波襲来で本当に寒い日々ですが、星空は今が一番美しい時季で、冬の一等星たちはここぞとばかり明るさを競い合っています。

 でも、今年は少々様変わり。宵空にはミス・プラネット金星と、ミスター・プラネット木星がいますし、夜更けては3月に最接近となる火星が明るさを増しつつあります。ただし小接近なので、大して明るくなりません。

 金星には27日に月が近づきます。続いて木星に30日に超接近、火星にはそれほどの接近ではありませんが来月10日にその南側を月が通過します。月と明るい惑星の接近は、毎晩の天体観望の大いなる楽しみです。宇宙のダイナミズムを実感していただくには恰好のイベントです。何も知らないと、月のそばにUFOがいると勘違いなさる方もいるかもと思うくらい、目を引く光景なんですね。

 さらに、夜更けて火星が東空に登場します。その赤さは火星独特のものですから、どなたもすぐにあれだ!と判るはずです。27日にはまだ地球から1億2300万kmほどの所にいますが、3月5日には1億80万kmまで接近します。

 といっても、2年と2か月ごとに接近を繰り返す火星の接近としては、今回は目立ったものではありません。6万年に一度とか言われたあの2003年の超接近5576万kmとは比較になりません。次回の大接近2018年7月の5759万kmとも相手になりません。

 では、ということで、逆に“より遠い小接近(笑)”を紹介しますと、今回を超えるのが2027年2月の1億142万kmというのがあります。これは記録的なもので、これ以上のものは2390年2月の1億143万kmまで起こりません。つまり、今回の小接近、なかなか珍しい接近とはいえるのです。ただ大接近の場合と異なり、小接近は超がついても姿が小さすぎて、観測的には問題になりません。せっかくの接近ですし、火星面に何が起こるか判らないので、十分な口径の望遠鏡をお持ちの方は、ぜひ観測してください。

※1月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。