集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第39夜「ロイヤルスター」(2012年3月23日号)



 22日が新月でしたから、23日は日没後すぐに月が沈みます。条件が整えば24日、極めて細い月(「糸月」とも言う)が短時間、西空低く見えるかも知れません。25日にはどなたにも三日月(「眉月」というのがぴったり)が見えます。ただし、おぼろかも。こんな具合に、月の表情はとても豊かです。

 星の表情も、月に負けず劣らず豊かです。もちろん月と違って、肉眼で見る限り、星はたったの点像ですから、形が変わるわけではありませんし、一見すると変化なしですが、二見、三見と繰り返すと、それはもう毎回表情の変化を発見します。おもしろいですよ。

 中には、最近いつ爆発するのかで巷で話題になっている(笑)ベテルギウスなどのように毎日明るさを変える星もありますし、鋭い観察眼をお持ちの方なら、色も変えていることを発見なさることもあるでしょう。できれば、その様子をメモなさるのをお勧めします。万が一、今まで無かったはずの所に見慣れぬ星が現れていたら、もう大変。超新星や新星かも知れません。星空は生きています。

 ところで、今年3月末の空は普段の年より賑やかです。夕方は西空に金星と木星が、東空には最接近を過ぎたけれどまだ明るい火星が、そして南西空にはいつもの通り冬の輝星たち、すなわちアルデバラン・カペラ・カストル・ポルックス・プロキオン・シリウス・リゲル・ベテルギウスが輝き、東空にはよく見ると春の星座のしし座の1等星レグルスも輝いています。

 さらに、少し夜が更ければ、東空には土星と共に1等星スピカと、アルクトウルス、そして北東空には誰もが知っている北斗七星が上ってきます。午前0時をまわると、さそり座のアンタレスが南東空に上ってきます。このアンタレスと先ほどご紹介したアルデバラン・レグルス・スピカのことを、外国ではロイヤルスターと呼んでいます。占星術の世界では、王家の運命を司る星だそうです。そう知ると、これらの星が何となく高貴な星に見えてきますから不思議です。たったの点像の星たちにも、いろいろな表情があるのですね。

※3月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。