第40夜「一番星・二番星・三番星」(2012年3月30日号)
夕方、遊び疲れて家に帰ろうと野原を歩きながら見上げた空で、友達と「あっ、あそこに星が、あっ、こっちにも」と一番星・二番星・三番星を見つけた原体験は、たぶんどなたもお持ちのことでしょう。東京のど真ん中で育った私ですら、そういう経験がたくさんあります。今は高層マンションやビルが建ち並んでいるので、ちょっと難しいかもしれません。今の都会の子どもたちにも、そんな経験をしてほしいものですが……。
でも、それらの星が何て言う名前の星なのかを、お調べにはなった方はそれほど多くはないかもしれません。実はここにもちょっとした3つの科学があるのです。
その1、季節変化があると言うこと。その2、観望地によって違いがあること。その3、星の色の違いによって、順番が逆転することがある、ということです。
詳細をここでお話することはできませんが、例えば、その1。毎年1月末からずっと一番星がおおいぬ座の白い輝星シリウス、二番星がぎょしゃ座の黄色のカペラ、三番星がオリオン座の白いリゲルでしたが、4月3日に三番星がリゲルからうしかい座の橙色のアルクトウルスに交代し、5日にはアルクトウルスが二番星に格上げ、カペラが三番星に格下げされ、この順番は5月の13日まで続きますが、14日以降はシリウスが翌年1月20日の夕空までいないので、その他の星たちの天下です。
その2は、南の国ほど、その入れ替わりが頻繁です。北海道より更に北の北緯50度地点では1等星の個数が5~11(季節によって変動する)、東京など北緯35度では6~12なのに対し、赤道上では6~15、オーストラリアなど南緯35度では、10~15となります。
その3は、大気の混濁度が問題です。塵が多く夕焼け空が見事なときには、赤っぽい星は出現が遅れます。茜空に紛れてしまうからです。逆に乾燥した上天気の場合はかなりの時間青空が残り白い星が見えにくくなります。
夕空を見上げて○番星を科学すれば、きっと星と仲良くなれますよ!
※3月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。