第64夜「天の川を見よう」(2012年9月14日号)
みなさんは、天の川をご覧になったことがありますか。ご覧になったことがある方は、ぜひこれからもそのご記憶を、大切に保存してください。というのは、首都圏(と言うより日本の大都市のほとんど)では、ここ何十年もの間、ほぼ、天の川は見えていないし、そればかりでなく、これからより一層見えなくなるようだからです。悲しいかな、光害が進むでしょうから。
東京では、1972年7月12日に練馬区在住のベテラン天文ファンが、嵐が過ぎ去った夜中に、つまり空中の塵がきれいさっぱり飛び去った後に、はくちょう座の胴体付近に位置するやや黄色みがかった白いはくちょう座ガンマ星(アラビア名サダル:胸)付近に、かろうじて白い天の川を認められて以来、公式の文章として発表されたものがありません。
もちろんほぼ毎晩星の観測をしている私も、住まいは東京都の端ですが、見ることができていません。生まれてから高校生の頃(今から50年以上前の話です)まで、東京都心の神田という本屋街で有名な所に住んでいましたが、そこでは何度も見た記憶があります。
なので、少なくとも今40代以下の東京の人は、天の川を見たことがありませんとおっしゃる方がほとんどで、キャンプで山に行かれたときに、上を見てビックリだそうです。
今週は16日が新月で連休でもあり、絶好の天の川観望チャンスです。日曜日ですから、街灯や町明かりが邪魔しない場所にお出かけになるのはいかがですか。天の川ばかりでなく、ついでに明け方までがんばると、東の空高くに夜中の明星・木星が、さらに東の空の中ほどには明けの明星・金星が覇を競っています。これも見ものですよ。おまけにオリオン座やおおいぬ座などの輝星群もがんばっています。
そうそう、21日にはオリオン座流星群がピークを迎えます。宵のうちに月が沈んで、これも観望のチャンスになりますが、その日まで待たなくても、この群の流星は、すでにボチボチ飛び始めているはずです。
※9月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。