第66夜「南の一つ星パート2+中秋の名月」(2012年9月28日号)
第65回でフォーマルハウトのことをお話しし、その最後で最近の天文学の発展がもの凄いとご案内いたしましたが、今年4月に確かにもの凄いことが発表されました。そして、その発見には、日本の国立天文台のすばる望遠鏡が一役買っていたのですから、これまた凄い。
この星の周りに土星のような環があることとと、惑星が回っていることは、前回にもお話ししたとおりです。
しかし、その環がバラバラにならず2個の惑星で整えられていることや、ハレー彗星クラスのサイズのものなら、1日あたり2回ほども衝突しあって、数千分の1mmくらいの微粒子になり、それがフォーマルハウトの強烈な光で吹き飛ばされて、チリでできている環に材料を補給し続けていることがわかったのです。これらは、ハワイにあるすばる望遠鏡と、衛星軌道上にある赤外線天文衛星ハーシェルの観測という、国際規模の研究協力で明らかになったことでした。
そればかりではなく、2個の惑星は、そのサイズが地球の10分の1倍から3倍程度の小型惑星で(ただし太陽に当たるフォーマルハウトから相当に離れているため寒くて生命がいる可能性はない)、環の半径は太陽~冥王星間の3倍半もあることもわかりました。
夜空では寂しげに白く耀くだけの秋の一つ星が、こんなに天文学的に凄い星だということがわかったのですね。明後日30日が中秋の名月ですから、その月が中天にかかる22時頃、お月見のついでに、ほぼ真南に来る南の一つ星「フォーマルハウト」を、しばしの間眺めてみませんか。月明かりで明るい夜空でも、1等星フォーマルハウトは負けません。
そして、肉眼ではもちろん見ることができませんが、そこに2個の惑星と巨大な環があることを想像するだけでもワクワクすること間違いありません。人間の叡智や科学の力ってすばらしいですね。もちろん、情緒的に月や星を眺めることもすばらしい。30日は、そんなふたつのすばらしさを、ぜひ体験してください。
※9月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。