集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第61夜「今年の本当の七夕は?」(2012年8月24日号)



 明治6年1月1日は1873年1月1日でした。当たり前だ! とお思いかと思いますが、前年の明治五年元旦は、1872年2月9日でした。同年十二月三日が西洋のカレンダーに準じる明治6年1月1日に変更されました。そして明治五年は本来二十九日まででしたが、三十と三十一日が追加され、十二月が消滅し、翌日がいきなり1月1日になりました。このため、年越しそばを食べることができなくなり、三十日の付け払いが消滅したり、あれやこれやでテンヤワンヤになったそうです。

 つまり来年は、日本の改暦140周年です。そのため大きな影響を被ったのが、七夕です。今の7月7日は、東北地方や関東ばかりでなく、日本の多くの地方で梅雨が真っ盛り、星を眺めることはほとんど無理、雷や台風も悩みの種の季節です。おまけに、宵の口では織姫星はそこそこの高さに昇っていますが、彦星は東の空に低く、あれかな?と探さなければならないほどです。

 伝統的七夕、世に言う旧暦の七夕は、今年は今月24日です。織姫・彦星とも東空に十分高く昇っており、すぐに判ります。月はほぼ半月状でかなり明るいため、肝心の天の川はかなり見えにくくなっていますが、その月が西に沈む午後10時半過ぎからは、徐々に空が暗くなり、天の川は北東~真上~南西に流れているように見えてきます。

 七夕説話は、昔から世界各地で伝えられています。元々エジプトで語られた話が原型だと言われ、イランで古くから信じられたゾロアスター教の教典には、地上界と天上界の境とされた三途の川に懸かる橋のたもとに、技芸に秀でた女性が二匹の犬と幼児を連れている話が記されており、それが後代に犬が牛に代わって織姫・彦星の話になったという説があります。古代中国では、日夜労役や兵役に駆り立てられていた農民達の悲哀が背景にあるとも言われており、決して仕事をさぼっていたわけではないそうです。いろいろありますね。 

※8月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。