第68夜「秋の星空散歩」(2012年10月12日号)
今年は春から夏にかけて主役の二人だった火星と土星が、秋も半ばの今頃には、まず土星が日没直後、火星も2時間後には西空に沈んでしまうようになり、宵空からサヨナラしてしまいました。代わっての主役は、20時過ぎに東空に登場する木星です。
英語名ジュピターは、ギリシャ神話のゼウスで、ローマでもユピテルの名前で崇め奉られた神様、雷神として畏れられました。でも、もちろん木星が出現したからと言って、にわかに夜空がかき曇るわけではありませんし、多少の雲が出現しても、透けて見えるほど木星は明るく輝きます。ですが、満月とは違って眩しいほどではなく、周囲の星たちと仲良くやってくれています。
なので、木星が見頃の高さに上る22時頃、そのそばにいるおうし座の1等星赤いアルデバランや、その独特な形状から日本では釣り鐘星などと呼ばれ、牡牛の頭を形成するヒアデス星団、あるいはその上方にゴチャっとまとまっているゴチャゴチャ星、もちろんよく知られた「すばる(プレアデス星団)」を見ると、「あぁ、いよいよ秋が来たな」と感じることになります。
つまり、月明かりがない今こそ秋の絶好の星空散歩シーズンなのです。私は、昔米国のアマチュア向け天文雑誌に連載されていたラムリング・スルー・ザ・スカイ(星空そぞろ歩き)というコーナーを、つたない英語力ですが愛読していました。当然歩くわけにはいきませんが、ゆったりとした気分で星空をぶらつくというのが何ともいえませんでした。
肉眼だけでもやれますが、もし可能ならば双眼鏡を利用して、バードウォッチングならぬスターウォッチングとしゃれ込み、ヒアデス星団、プレアデス星団、ペルセウス座α星群(これは北天銀河の宝石箱として知られています)、同じくペルセウス座二重星団などをパトロールすることをお勧めします。いい気分になりますよ。
※10月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。