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あつぼし見上げて夜話

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第70夜「東と西はどっちでしょう?」(2012年10月26日号)



「菜の花や 月は東に 日は西に」は、蕪村の有名な春の俳句ですが、ある学校の子どもたちが「月は東に沈み、太陽は西に沈む」と答えたそうです。びっくりですね。

 ところで、地球の赤道に赤い線が引かれているわけではないのは、みなさんもご存知の通りです。もちろん一部の地図には、そこに赤線が引かれていますが・・・。北極点と南極点の両方から90度の場所です、というのが、その定義です。

 そこで、地球をばっさり赤道で切ったとします。すると、2個の半球ができあがります。その断面をそのまま空の方に延長すると、そこに一本の線を描くことができます。それを天の赤道と言い、そこから90度南北の方向が天の南極と天の北極と呼びます。天の球(天球)は、天の南北極を中心に、ほぼ一日で回転しています。水平線と天の赤道が交差するところが真東と真西です。

 少々面倒くさい(これが科学用語の定義の特徴)ことをお話しましたが、26日夜はこれをほとんど目で見ることができます。26日午前7時に月(この時は水平線下にいて見えない)が、天の赤道を南から北に通過します。なので、月が顔を出す午後3時前には、月はやや北に位置しますが、その差はわずかです。

  月は、来月2日まで毎日少しずつ天の赤道から北に北にと移動するので、27日明け方月没時では真西よりちょっと北に沈みます。ですが、26日の月出と27日の月没は、どちらも晴れてさえいれば、そして皆さんが起きてさえいれば、東と西がほぼ正確に分かることになります。

  ところで東を「ひがし」と言うわけは? 上代に日に向かう方角という意味から、太陽が昇る方向を「ひむかし」と言ったそうで、平安時代に「ひむがし」、鎌倉時代に「ひんがし」から「ひがし」に転化したそうです。

 では、西を「にし」と言うわけは? みなさんで調べてみませんか。言葉をたどってみるのも、とてもおもしろいですよ。

※10月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。