集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第98夜「系外惑星は人類を変える」(2013年5月10日号)



 10日は新月です。私が小学生だった60年ほど前は、東京都内でも月がない夜は天の川を見ることができました。今や無理ですね。おかげで若い人たちにとって七夕は意味不明の話になりました。・・・で、織姫星や彦星がどの星なのか、指でさせる人はごく少ない状況になりました。もちろん今月では、22時を回らないと七夕二星は上りません。もう少し遅く0時過ぎになると、七夕二星が高くなり、1等星デネブを加えた夏の大三角の中を流れる天の川を…残念ながら都会地では想像するだけとなります。

 さて、想像のついでに、デネブと織姫星の間に思いをはせることにしましょう。残念ながら、肉眼ではそれがどの星たちなのか、暗い星ばかりなので指さすことができませんが、ここに今世界中の天文学者が固唾をのんで注目している領域があります。ケプラーという宇宙探査機が常時監視を続けている場所です。

 私は、今から550年ほど前にコペルニクスによって、それまで常識だった天動説から劇的に地動説に転換したことが、再び今起こっていると思っています。もちろんこれまでにも宇宙は定常的、つまりいつも変わらないという考えから、宇宙は137億年前に大膨張を開始し、今はさらにそれが加速しつつあるという考えに変わったことがありましたし、大昔に「地球は平たい」から「地球は丸い」に変わったときも大変革でした。

 でも、デネブと織姫星の間を眺めるとき、私は「地球がどこにでもあるかも」ということをしみじみと思います。系外惑星という言葉が天文学者の間で常識になったのも、たった20年ほど前からです。探査機ケプラーが行っていることは、その捜索です。捜索範囲は地球から見た月のサイズ程度に限られていますが、常時観測対象恒星はなんと2000個もあるそうです。その計画以外で見つかった系外惑星も、今や800を超え、ほぼ全天に均等にあります。まったく凄い時代になったものです。

※5月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。