集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第97夜「だるま太陽」(2013年5月3日号)



 いよいよ日出が早く、日没が遅くなってきました。だから星空を見ることができる時間が少なくなってきて、つまらなくなりました。でも日本の広い地域では、一番夜が短い、すなわち夏至の頃は、うまい具合に梅雨にあたり(沖縄や北海道は違いますが)、体力をためることができます。本当に星を見るのには体力が必要です。夜の間、がんばるからですね。

 おかげで、ある人が言ったように「天文は体力だ!」なので、日頃鍛えたその成果かからなのか(?)、星好きには80、90歳でも元気な人もざらにいて、さらには長生きの天文学者も多いのです。私の調査では、特に19世紀に生きた学者が一番長生きでした。総数905人で71.04歳。20世紀の人は総数427人で68.83歳、ん、少し短命になったようですが・・・。でも、この調査は世紀をまたいだ人もカウントしていて、現在でもまだ活躍している人も多いわけですから、もう少し伸びるでしょう。

 長生きなのは、決して霞を食べているからではありません。宇宙のなぜを考えていると、おもしろくて希望が沸いてくるからだと、私は思っています。だって、「2035年9月2日の皆既日食を絶対見よう」とか、「できれば2061年8月のハレー彗星の姿(凄いことが予想されています)も見よう」とか、これは“希望”以外の何者でもないではありませんか。

 そこで、太平洋が見える地域にお住まいの方は日の出を、日本海方面の方は日没を、毎日御覧ください。水平線の彼方に太陽が居るとき、太陽が奇妙な形になったり、上部が一瞬グリーンやブルーに輝いたりすることがあるからです。ただし、それは毎日見えるわけではありません。見えたら「ラッキー!」と叫びましょう。

 太陽がつぶれて見えるので、だるま太陽とかマッシュルーム・サン、パンケーキ・サン、エトルリアの花瓶、オメガ(ギリシャ文字のΩ)サンなどと呼ばれます。また上部に色がつくのは、グリーン・フラッシュまたはブルー・フラッシュと言います。

 今日見えなくても「明日こそは」。今日見えたら、その面白さや美しさに「もう一度」となること請け合いの現象で、明日への希望を絶やさずに……。だまる太陽は七転び八起きです。

※5月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。