第122夜「盛り上がろう!星のウンチクで」(2013年10月25日号)
前回もお話しましたが、このところズーッと宵の南西空に金星が光っています。年末まで健在です。そこで、みなさんのお知り合いの方々が夕方集まったときに、ご一緒に見上げてみるのは如何でしょうか。そしてそんな折、皆さんがボソッと金星に関するとっておきのウンチクを語り始めると、きっとみなさんの株は大きく上がることでしょう。なぜなら、星の話は、お金儲けや政治などの世間的な話と大違いで無害・健全、そして誰もが関わる話題だからです。だって、宇宙や星が無かったら、そもそも皆さんは今誰もいないのですから。
それはともかく、例えば宵の明星と明けの明星のことを、英語でそれぞれヴィーナスとルシファーと言いますが、後者は電球の明るさのことを言うルックス(顔つきの良さのルックスではない)と関係があります。
元々ラテン語でルシが「光」または「輝き」を表し、それにもたらすという意味のフェーレが付いたものです。光をもたらすから、朝がやって来るというわけ。朝がやってくるだけなら良いのですが、ルシファーという魔王までやってくるかも知れません。
ちなみに、金星が昼に見えるときは、「争明」と言う名前に変わり、かつては戦争になるとも言われました。これで戦争の予言ができるなら、ミサイル監視用のレーダーなんて不必要になりますね。
占星術では、金星のことを♀の記号で表しますが、これは美の女神ヴィーナスが持つその美貌を映す手鏡を意味します。でも、沖縄の皆さんは、素朴に夕飯を欲しがる星(ユーバナマンジャーブシ)と呼びました。我らが日本人には、ピッタリな名前ですね。
英語にモーニング・スターとイブニング・スターという表現がありますが、日出直前・日没直後に見られる金星や木星など惑星の総称で、金星固有の名前ではありません。日本語でも明星を「あかぼし」と読む場合は、木星やさそり座のアンタレスを指すことがあります。後は皆さんの話術で盛り上がって下さい。
※10月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。