集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第125夜「アルコールに注意、アルゴールにも注意」(2013年11月15日号)



 文科系に苦手意識があるため、私は百人一首を真面目に味わったことはありませんが、それには月を詠んだ和歌が11首あるにも拘わらず、星を詠んだものは1首もないそうです。事実なら、この辺に古代日本人の美意識があるのかも知れません。

 とはいえ、理科系だと思いこんでいる私には、理解出来ないことがあります。それは、月がそれほど好きな日本人なのに、じつは月をよく見たことがないのではないかということ……。なぜなら、月に住んでいるとされる月兎が、みんな白兎のイメージなんですね。黒くて海と呼ばれる模様こそが兎の姿に見えているのはみなさんもご存知のとおり。つまり、白兎は探しても見つかりません。お月見の季節に売り出される月見団子の包装紙などにも、月で跳躍するのは決まって白兎。実際の月の模様から連想するなら、たとえば夏型の茶色の毛をした野兎たちを描いていただけるとよいのでは? と思ったりします。

 さて、11月の透明度の高い夜空に、月齢11の月が煌々と輝く15日の20時ごろ、北東の空にあるペルセウス座のアルゴル(アルゴールとも)という、普段は二等星で明るく見えているはずの星を探してみてください。もしかすると、見つからないかも知れません。それは、3等半に減光しているからです。比較のために、できればその時刻の2時間前後とその翌日の16日の同時刻頃にもアルゴル(アラビア語で悪魔という意味)をご覧ください。すると、この星が悪魔と呼ばれた意味と、科学的には伴星が主星の手前に来てその一部を隠す食変光星という星であることが、良く分かります。私は、挨拶文メッセージにもあるように、学生時代から多数回(2013年2月現在403回を数え)アルゴルの観測を(2022年頃500回の予定)続けています。

 その結果、数年ごとに数秒単位で変光周期を変えていることが双眼鏡での観測で分かっています。そして、現在は普通より大幅に伸びています。だいぶ寒くなってきましたので、大人の方は、ちょっとアルコールで身体を温めて(とはいえ飲みすぎには十分注意して)、アルゴールの明るさの変化をお楽しみください。きっと体がポッポとしてきますよ。

※11月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。