第128夜「川か道か毛虫か」(2013年12月6日号)
6日は宵空に三日月があり、その南西には宵の明星の金星が見えて、美しい情景です。金星は今の夜空では断然の一番星ですが、日没前どころか朝も昼も(要するに半日間)見えているので、一番星と言うのはちょっと変かもしれません。
金星が沈んで1時間弱すると、三日月が沈みます。その時刻は地域によって異なりますが、いずれにしても、夜の8時を過ぎた頃から月明かりの邪魔が無くなるので、よほどの都会地でない限り銀河が見えるでしょう。
ただ、はくちょう座やさそり座などが見える夏の銀河は、さそり座の隣にあるいて座に銀河系の中心があることから、冬の銀河に比べてずっと濃く、幅も広くなっています。ですが、夏の日本は湿気が多く、冬に比べて空全体が白っぽく見えます。なので、白く広がる銀河にコントラストが付かず、むしろ乾燥した冬空の方が、本来は薄い銀河が良く見えたりするものです。
ところで、銀河というと、最近は銀河系と同じ恒星の集団を言うようになり、例えばアンドロメダ大銀河(昔は大星雲)というように使われています。でも昔は天の川のことを漢語で銀河と呼びました。その他中国では、明河・天河・河漢・銀漢・雲漢とか、単に河とも漢とも呼びました。どれにも「氵」が付く字があります。中国や東南アジア、そして日本では水が流れる河と見たわけです。エジプトでも大河・ナイル川に関連させて、一部では河と見ています。
ところが、アメリカの原住民や北欧、あるいはスペインやトルコなどでは、魂の道や天使の道、あるいは巡礼の道など、道と見るのが一般的です。英語のミルキー・ウェイも道ですね。またフィンランドではいかにもそれらしく、光の道と言います。オーロラと重なったら、きっとそう思うのでしょうね。
面白いところでは、アメリカ原住民による毛虫があります。男たちが毛虫に変身して、女性(恒星)の元に通う姿だと言います。みなさんも諸民族の神話を調べてみませんか。
※12月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。