第130夜「冬至の話」(2013年12月20日号)
宵空遅くに、いよいよ冬の星座たちが上ってきました。冬ですね。ヨーロッパでも22日の冬至の日から冬が始まります。天文学上でもこの日から冬が始まります。
冬空の寒月と共に、木星も月の西側に輝き、月と明るさを競っていますね。昔から夜中の明星と讃えられている理由がよく分かります。確かに宵の明星もしくは明けの明星ほどではありませんが、恒星では最も明るいシリウスの2倍以上の光を放ち圧倒しています。
真夜中の露天風呂に浸って、真上を見上げ、木星から元気をもらうなんていうのは、贅沢なことでしょうか?それも可能なら、露天風呂はゆず湯でしょうね。
ところでみなさん、なぜ冬至の日にはゆず湯なのかご存じですか?また、南瓜(カボチャ)を戴くこともご存じですか。中国渡来の陰陽五行説で、冬至から夏至までが陽とされ、夏至から冬至までが陰だそうです。ただし、春から夏までが陽、秋から冬までが陰という説もあります。冬至過ぎに日が伸び始めることを「一陽来復」といって、私は年賀状に必ずそれを書き込むことにしています。要するにおめでたいことなのです。
このため、中国や日本では、冬至の日が昔から尊ばれていました。南瓜はその皮の色が春を意味する青で、中身が夏を表現する赤だからです。また柚子(ゆず)は南国代表の果実とされて、ゆず湯に入って健康を祈願するというワケです。
こうして、日本など北半球中緯度文化圏では、年中行事でも冬至の日が重視されました。一方、カルチャースクールで星のお話をさせて戴くとき、夏至っていつでしょうと質問すると、8月だったかな?と首をかしげる方が多く、夏至の無名現象をしばし感じるくらい、夏至は知られていません。ところが、高緯度地方に多い石造り遺跡などでは、決まって夏至の日出・日没方向が重要視されています。
文化圏の違いで、冬至と夏至への関心に大きな差があって、とてもおもしろいですよ。
※12月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。