集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第129夜「宇宙を調べるのは科学です」(2013年12月13日号)



 宵の東空に、木星が明るく輝いています。また夕方の西空に、それよりはるかに明るい金星が輝いていました。金星が西の地平線に沈みかかると、まるでリレーするかのように木星が東空に上ってきます。夜中になると木星は南の空高くに君臨し、だから「夜中の明星」と呼ばれます。金星は絶対に夜中の明星にはなりません。地球より太陽に近い内側の軌道を公転しているからです。なので、今頃のように「宵の明星」か、来年春から夏のように「明けの明星」にしかなりません。

 今から2000年以上前の紀元前7年12月、目を見張る現象が夜空に起こっていました。人によっては、それでユダヤの国に救世主が誕生したと考え、バビロンの都近くからはるばるユダヤのベツレヘムの馬小屋を訪ねた3人の人物がいました。みなさんよくご存じのイエス・キリスト誕生に立ち会った博士たちの話です。

 このお話が事実か否かは別として、その時うお座の一角で、まるで寄り添うように接近していた星が木星と土星でした。二星が最も接近したのは同月1日のこと、角度にしてたったの1度まで接近しました。満月直径の2倍弱しか離れていません。でもその後は木星が土星を置き去りにし、14日に1度1/4、20日に1度1/2、25日1度3/4、そして29日に2度と東に離れていきました。

 1604年秋には、木星と土星だけでなく、火星も加わり互いに接近したので、その方向にあたるへびつかい座が注目されていました。そこに、たまたま新星(今では超新星とされる)が出現し、11月にピークの明るさはマイナス3等に耀きました。木星より明るくなったのです。それ以降銀河系内には超新星が出現していません。一つの銀河内に超新星が現れるのは400年に一度ほどと言われていますから、そろそろ天の川のほとりに現れるかも知れません。

 でも、超新星や新星や新彗星など、あるいは隕石落下など予言で発見された星は一つもありません。綿密な観察で出現が予測されるようにいずれはなるかも知れませんが、そのためには詳細な科学的観測が必要なのです。それは、先に述べた惑星たちの動きや接近のメカニズムが、長い観測の結果解明され、過去や未来のようすを的確に決められるようになったことを思い浮かべてみるとよいでしょう。

※12月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。