第133夜「天文家はニックネーム付けが得意です。」(2014年1月10日号)
10日の宵空に月が見えています。8日に上弦でしたから、やや太り気味の半月ですが、味気ないので私はそれを「肉まん月」と呼び、三日月を「バナナ月」、半月を「かまぼこ月」、満月を「せんべい月」と呼んでいます。子供たちには結構受けています。
昨年、ハッブル宇宙望遠鏡が撮影したペンギン銀河(別名Arp142、NGC2936うみへび座3億3000万光年にある衝突銀河)に驚かされ、なにしろペンギンにそっくりなので、私は講師をさせて貰っているカルチャーセンターの受講者のみなさんに、早速800個余りコレクションした「星のニックネーム」というのを披露し、遊んでいただきました。
クラゲ星雲、砂時計星雲、スライスレモン星雲、チョウチョ星雲、フクロウ星雲、かめ星雲、かもめ星雲、ドーナツ星雲、ネックレス星雲、コートハンガー星団、スワン星雲、パックマン星雲、モンキーフェース星雲、手のひら星雲、走る男星雲などなど。ドーナツ星雲や馬の首星雲、バラ星雲や北アメリカ星雲とペリカン星雲などは、大変有名ですね。
どうして天文家は、こんなにたくさんニックネームが付けられるのでしょうか。もちろんのこと、宇宙には多種多様な天体が星の数ほどあるからですが、もともと天文家は写真の暗室(今はほとんど無いに等しい?)でトレーニングされていたのです。現像液中で印画紙にジワーっと画像が現れてくると、あっ××だ!○○そっくり!じゃ、NGC△⊿□◇よりこれにしようと、ニックネームを決めてしまうと言うわけです。
写真の暗室と言うところは面白い場所で、大体孤独な部屋ですから(私も学生時代の4年間毎日半日はこの中で暮らしました)、いろんな発想が許され、かつまた写真に集中することができます。なので、私も眼底出血の瞳星雲NGC6751、どんぐり銀河Arp220、繭玉星雲IC418などを命名しました。
いかがですか、みなさんも星にニックネームを付けて遊んでみませんか?
※1月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。