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あつぼし見上げて夜話

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第136夜「旧暦のお正月」(2014年1月31日号)



 一月もやっと末になり、明日からは二月です。進駐軍が日本に来て以来、冬の最後で三月になると春になりましたが(つまり現代の季節区分は米国式なのです)、昔の日本では、立春から立夏の前日までが春でした。

 明治6年に日本ではカレンダーが代わりました。いわゆる旧暦(天保暦)から新暦へとの変更です。歴史学的には、日本が欧米とのおつきあいに色々と困っていたからだそうですが、ともかくそれは1873年のことでした。ということは、去年が140周年でした。
なので、今では新暦と言ってもぴんと来ませんが、要するに現在国際的に共通の暦法になっているグレゴリオ暦で2014年1月31日は、新月すなわち朔日ですから、旧暦では正月一日になります。

 ちなみに、一日がイチニチではなくツイタチと読まれるわけは、その日新月後初めて細い月が西の空に見えるようになる(はず)だからです。月が西の空に立つから、ツキタツからツイタチになりました。

 ところで、今年の立春は、太陽が春分点から215度のところを通過する2月4日です。立春に一番近い朔の日が旧暦の正月一日です。だから新春で賀春なのです。1月31日が本当のお正月と申し上げたのは、そういう訳です。

 初日の出は、新月の夜、暗黒の一晩に初めて明るい太陽が上ってくるからこそ「目出度い」のです。先週お話したおねしょの跡をはっきり見ることができるまっ暗な夜空だからですね。ただ、そんな夜空でも天の川を見ることは容易ではありません。冬の天の川は、夏の天の川に比べて細く、暗いのです。なぜなら、円盤形の銀河系の中心方向があるいて座とは反対方向になるからです。つまり中心方向に比べて、星の数がずっと少ないからです。

 こんなことを考えると、少しは天文学的になりますね。とりあえず見えにくい冬の天の川は、北はカシオペヤ座から、ぎょしゃ座のカペラとおうし座のアルデバランの間を通り、冬の大三角の中を通過しています。

※1月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。