集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

目次

第135夜「おねしょの神様」(2014年1月24日号)



 24日(金)は月齢23で下弦2日後です。なので、宵空には月明かりが無く、漆黒の夜空に本来なら覆われているはずです。
そんな21時頃、南の空にオリオン座が見えます。きっとみなさんには、棍棒を高く振り上げて、西空にいる牡牛と戦う勇者オリオンの姿をまざまざと御覧になるでしょうが、想像力が貧弱な私には、漏らしたオシッコの跡がくっきりと見える布団が見えてしまいます。星の民俗学の大先達である故野尻抱影先生が、私たちに「あれは日本で、三人の子供が背負って陽に干している布団だよ」と教えてくださいました。

 つまり、ベテルギウス・ベラトリックス・リゲル・サイフを布団に、三つ星を三人の子供に、オリオン大星雲をオシッコの跡に見たわけです。月がない夜は、オシッコの跡つまり大星雲はくっきりと見えます。それを見つけたお母さんが、怒って「三人で背負って干していなさい」と命じた話は、第81夜オリオン大星雲でご紹介しましたが、今夜はその続きです。

 実はオリオンは昔ウリオンと呼ばれていました。ギリシャ語で(神様の)オシッコという意味の言葉です。ある晩神様が一夜の宿を提供してくれた狩人に、お礼に熊の毛皮にオシッコをかけてくれたのだそうです。狩人はそれを宝として壁に貼って飾っていたのが、いつのまにか空に上がって星座になったというのです。

 そういえば、布団でなく熊の毛皮にも見えてきますね。ちなみに、泌尿器学のことをウリオロジーといいます。
洋の東西でオリオン大星雲を同じように見たのは、なんとも言えずほほえましいことですね。星の民俗学は科学ではありませんが、私たちにいろいろなことを発見させてくれます。とても面白いですよ。

 それにしても、そんなロマン溢れる星空を、貴重な電力を使って、ライトアップと称して見えなくしてしまうのが、なんでロマンチックなのでしょうか? やめてほしいものです。

※1月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。