第18夜「木星を見よう」(2011年10月28日号)
日没が早くなったおかげで、午後8時には完全な暗闇が訪れます。特に27日が新月ですから、今週末は晴れれば素晴らしい星空が訪れるでしょう。
北緯39度の陸前高田市では、その時刻、真南の夜空、高さ20度強のあたりに白い1等星が見えます。みなみのうお座のフォーマルハウト(地球から240兆kmの距離にあります)です。「秋星」とか「南の一つ星」(ともに星の文人といわれた野尻抱影氏の命名)と呼ばれ、1等星の少ない秋の星空では貴重な星です。
そればかりでなく、今から5年前に、この星には惑星があることがわかりました。21個の1等星中、今のところ惑星を持つものは他にふたご座のポルックスしかありません。
ただ、フォーマルハウトの母星、つまり太陽の役割をする星は、誕生後2億年しか経ていないので、その惑星には生き物が生まれてはいないでしょう。しかもその星の1年、すなわち母星の周りを公転する期間は、とんでもなく長く、地球の900年に当たります。
惑星といえば、金星に次いで明るく(ただし地球に大接近する時の火星はもっと明るくなる)輝く木星(公転周期12年)が、午後8時には陸前高田市で東南東の空40度付近に見えています。金星が夕方見える場合には「宵の明星」、明け方見える場合には「明けの明星」と呼ばれることは、よく知られていますが、木星が「夜中の明星」と呼ばれることはご存じでしたか?
金星が地球より内側をまわっているため、絶対に夜中(午後10時頃から午前2時頃までの間)に見えないので、それに替わっての「明星」というイメージです。夜中に金星よりは暗いけれど、恒星で一番明るいおおいぬ座のシリウス(今なら午後11時頃東空に上る)よりはるかに明るい星が見えれば、それは「夜中の明星=木星」と思って良いでしょう。
特に今月末、太陽と地球と木星が直線状に並ぶため、地球が木星に近づいています。なので、木星は年間で最も明るく(-2.8等)見えます。この頃地球からの距離は約6億km。近づいていると言っても、私たちの感覚からすれば遥か彼方。それでもピカピカの木星は、もっと間近で見たら、さぞ明るいことでしょうね。
※10月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。