第19夜「ぎょしゃ座のアルマーズを見ませんか?」(2011年11月4日号)
関東地方の今年の梅雨明けは、とても早く7月9日でした。よし明日は早起きだ!と決意し、午前3時に外に出ました。木星が東空高く、北東にぎょしゃ座のカペラが見えました。そして、双眼鏡をカペラからやや右上に向けたとき、私の夏が始まったのです。予想通りその星は元の3.1等星に戻っていました。その名は「アルマーズ」、ぎょしゃ座のε(イプシロン)星です。
4月28日以来70日、日没頃に沈み、日出後に上ってくる、つまり見ることができない期間でしたから、この日が来年4月末までの10か月弱のロングランのスタートでした。私がこの星を観測し始めてから、今年で丸3年になりました。まだまだ序の口で、私は今後27年間(9892日)、92歳になるまでがんばろうと思っています。
実はこの星は、超ロングランの食変光星で、次回の食(普段より0.6等ほど暗くなる)、すなわち伴星が主星を食するまで27年の周期を持っているからです。食変光星として、最長周期の星になっています。1821年に食が発見されて、2009~11年までの今回で、わずか9回しか食が観測されていません。
でも困ったことに、今もって謎が盛り沢山のままなのです。主星も太陽の300倍もの大きさがありますが、伴星はなんと2000倍、しかも普通の球形の星とは違い、段々と大きくなっていく円盤形、その真ん中には熱い星があるらしいのですが、もちろん目で見ることができません。ことによると、熱い星がちょうど手前に来たとき少し明るくなることから、円盤の中心が掃除されて、穴が開いているかも知れないと、前回の食までは考えられていました。
ところが今回の食では、中心部にあるといわれていた穴が無いらしいことになりました。こうなったら仕方ありません。私は27年間観測することを決心しました。
みなさんも、このかなり個性的な星を一度で結構ですから、ご覧になりませんか。ただしこの星の魅力に取り付かれると、多少長生きをする必要がありますが・・・。
※11月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。