第20夜「月がすばるに接近します」(2011年11月11日号)
おうし座の星団すばるは、日本が誇るすばる望遠鏡の名前にも、また清少納言の有名な枕草子の文章にも、はたまた多数の昴君の名前にも用いられています。たぶん星の名前では日本で一番有名なものでしょう。
そのずばるに今週末には月が接近します。この日は、1が並びますね。だからといって、2011年11月11日午後11時11分11秒に、無理して見る必要はありません。むしろ防寒対策を十分にして、可能なら一晩中、月がすばるに接近し、離れていく様子を見てみましょう。
残念ながら月が満月を過ぎで大変に明るいため、3等以下のすばるの星々を肉眼で見ることはほとんどできません。月を視野から外して双眼鏡を使って見る必要があります。それでも難しいかもしれませんが…。
月は、時期によってすばるを隠すことがあります。ですが、ここしばらくの間、日本からだと月がすばるの南を通過するので、すばる食を観測することはできません。2023年頃になると、やっと食を見ることができるようになります。
一つの星が月の縁に隠れるのと違って、すばるのような星団食は、おもしろいですよ。あっちの星が隠れたと思えば、次はこっちの星が、その次はそっちの星。今度はあっちの星が現れたと思えば、次はこっちの星が、その次はそっちの星。忙しい上に、予想がおもしろいのです。
その上、月の縁すれすれを通過していく星の限界線星食でも起これば、それはもう最高です!かなり高級な天体観測になりますが、ちかちかと見え隠れするすばるの星を追いながら、月の縁に位置するクレーターのシルエットを楽しむことができます。
月の運動を正確に観測するためには、100分の1秒以下までの精度が必要ですが、月が動くことを楽しむ程度ならば、気楽にご覧ください。ということで、日本でそれを楽しむつもりなら、2023年頃まで気長に待つことにしましょう。
それにしても、天体観測というのは、気長が一番なのですね。長生きしたいものです。
※11月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。