第214夜「日本で初めての日曜日」(2015年7月31日号)
テレビでも、良く「今日は何の日?」という情報が流されます。大方は誰それが史上初めて何かをした日とか、何かを見た日とかですが、あるいは大火が発生した日とか、大地震が起きた日だといった嫌な日のこともあります。そして、偉人が誕生した日ということもありますね。
でも、今日7月31日はどうでしょう。実は西暦986年7月31日は、当時の日本では長徳四年七月六日任戌という日でしたが、日本で初めて日曜(当時の日本では密と言われた)が暦に記載されたのです。記録されたのは、当時公式に使われていた具注暦というカレンダーでしたが、それを日記代わりに使用していた藤原道長という人の日記「御堂関白記:みどうかんぱくき」でした。
だからといってどうと言うことはありません。曜日に大した意味がないというからではありません。実は曜日には、歴史的には大した意味があったのです。それは、当時の人々にとって、地球から遠い順(当時の天文学では天体までの距離は測れなかったので、軌道を一周する時間が長いものを遠いと考えた)に、土星・木星・火星・太陽(日)・金星・水星・月と並べ、一方一日を24時間に分け、第一時間目を土、二時間目を木、三時間目を火・・・七時間目を月、八時間目を土(以下同様に繰り返し)、翌日の一時間目が日、二時間目が金・・・、翌々日の一時間目が月、二時間目が土、以下同様。
すると、毎日一時間目が土日月火水木金と並びます。これで一週間の曜日順が完成しました。嘘みたいでしょう。でも、当時の人々が天動説を信じていたことが、これからも判りますね。現代は地動説の時代ですから、もちろんこれには意味がないことになりますが…。
ところで、今頃日没間もない頃、たそがれ時の西の低空に、木星と金星が斜めに並んでいます。どちらも明るい惑星ですが、夕焼けがそれ以上に明るいですから、見るのは非常に困難ですが、挑戦してみませんか。そして、曜日の起源について考えてみませんか。
※7月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。