第217夜「マイ星座」(2015年8月21日号)
20日が今年の伝統的七夕でした。織り姫様がこと座、彦星様がわし座の共に一等星で、ベガ(アラビア語での意味は墜ちる禿鷹)とアルタイル(同じく飛ぶ鷲)で、共に日本的ではない凄い名前ですね。
みなさんは星座にたいへん親しみを感じておられることでしょう。むしろそれこそが天文学の象徴みたいに思っておられるかも知れません。私は変光星の観測を長い間続けていて、例えばアルゴルという食変光星がペルセウス座ベータ、同じく食変光星のアルマーズがぎょしゃ座イプシロン、長周期脈動型変光星ミラがくじら座オミクロンというように、××座○○という星座名+星名で昔から親しんできました。
しかしながら、それは単なる名前でしかなく、つまり、星の住所でそれ以外さしたる意味はありません。それどころか、現在、星座の境界付近に位置する星は、星がそれぞれ運動していることから、そのうちに所属星座を変更する可能性すらあります。つまり、星のお引っ越しです。
また、例えばベガが25光年、アルタイルが17光年、(同じ星座ではありませんが)それらと夏の大三角を作るはくちょう座のデネブは1400光年とバラバラの距離なのです。
星座は、地球から見てたまたま何となくそんな形に見えるからという、極めて人間中心主義的なもので科学の対象ではありません。だから、日本人の見方と外国人の見方は大きく異なっているのです。例えば砂漠地方で作られたさそり座は、海に取り囲まれる日本では釣り針に見られています(第106、160、212夜参照)。
昔の様々な民族の人々が、その環境や宗教などに基づいて想像を巡らし、考えついた星座を探ると、とても面白いことを見つけることができます。でもそれより私は、現代のみなさんがご自分の経験や親しみを感じているものを、夜空に創り上げるマイ星座の製作をお勧めします。楽しいですよ。
※8月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。