第216夜「伝統的七夕」(2015年8月14日号)
今年は月明かりがなく好条件のペルセウス座流星群ですが、ご覧になられましたか。あいにくの天気のところも多いようですが・・・。
さて、来週木曜日の20日、お住まいが東日本各地なら、20時ではちょっと遅いかも知れません。かと言って、19時では早すぎて空が明るく、まだ織り姫星はおろか、彦星が櫂(かい)を漕ぐ舟形の細い月も見えていないかも知れません。
とりあえず高からず低からず、空は十分に暗くなった19時30分頃、西の空をご覧ください。確かに舟形の月がご覧になれるはずです。柿本人麻呂さんが読んだ「天の海に雲の波立ち月の舟 星の林に漕ぎ隠る見ゆ」という和歌の情景が実感できるはずです。
旧暦七月七日、近年では伝統的七夕と呼ばれるようになった昔からの七夕です。みなさんが普通にお使いのカレンダー(かつては新暦の・・・と呼ばれたもの、ただし新暦になったのは明治6年:1873年:今から142年も前のことでした)の7月7日は、七夕ではありませんよ。
なぜかと言えば、月が半月は半月でも下弦の半月前。なので、ちょっと太め。本当の下弦は7月9日朝でしたが、ともかく夜半前にやっと東の空に登場する月でしたから、七夕二星が乗る月ではありませんでした。やっぱり七夕は、仙台にお住まいの方々には申し訳ありませんが、旧暦で行わなければダメです。
この日、月が沈む21時過ぎになれば、その理由がはっきりとします。月明かりが無くなるので、天の川が見えてくるのです。ただし光害がない場所に限ります。東京では、もう43年間天の川が消えていますから、それを見て愉しむためには、どこかに行ってください。
月の舟が西の地平線下に沈んで(沈没しては困りますが)、夜空が暗くなると、天の川も見え始め、満点の満天の星の世界となり、正しく七夕にふさわしい空になります。あとは晴天を望むだけ。
こんな夢溢れる行事は、ぜひ後世の人たちに伝え残したいですね。おまけに18日に、はくちょう座流星群が極大になります。織り姫の脇から流れ星が・・・、どうですか?
※8月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。