集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第238夜「天文には夢があります」(2016年1月15日号)



  一年で一番寒い時期に差し掛かった今頃、明け方に早起きしましょう。というのは、いかにも無理強いですが、日出約1時間前の午前5時50分頃、白み始めた南側の空に木星と火星と金星が、良く見えています。一番西側の木星は枯れ葉色、南の空の火星は赤血色、東空の金星は黄金色と、色で見分けられますが、より簡単には明るさでしょうね。

 一番明るいのはもちろん金星、中位が木星、一番暗いのは火星です。火星はみなさんよくご存じの通り、地球のすぐ外側を公転しています。なので、2年と2か月ごとに地球に接近します。でも本当は、太陽系の内側を回っている地球の公転速度の方が速く、このため地球が接近すると言う方が正解です。

 今年は5月末に最接近で、地球-太陽間距離(約1億4959万km)の0.752791倍まで近づきます。それでも大変遠くですが、4億km近く離れることもある火星にしては、ごく近いといえます。

 ところが上には上があり、1回帰後の2018年7月には0.575892倍、更に8回帰後の2035年9月(関東地方で皆既日食が見える月)には0.569556倍、2050年8月には0.559556倍、そして、もうちょっとがんばれる方は2082年8月の0.558838倍をお待ちください。

 どれも残念ながら2003年8月に起きた6万年振りとも言われた火星の超大接近(0.557566倍)には及びませんが、それでもは普段よりずっと明るく、望遠鏡では大きく見えますよ!

 そうです、天文には夢があるのです。みなさんどうぞ、その日までがんばってください。生きてさえいれば、その日と天文現象は、必ずやってくるのですから。

 火星と言えば、テラフォーミングと言って、火星地球化計画なるものが世界各国で研究されています。今世紀中には火星に人類が移住して大繁栄をしているかも知れません。宇宙線被爆など種々な問題がありますが、みなさんのご子孫にぜひとも夢を託しましょう!

※1月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。