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あつぼし見上げて夜話

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第239夜「星座は巡る」(2016年1月22日号)



 木枯らしとだえて、冴ゆる空より…という歌「冬の星座」を、団塊の世代以上の方ならきっとご存じのことでしょう。表向きは堀内敬三先生訳詞・ヘイズ作曲とされ、昭和22年7月に文部省が発表した中学生向けの歌ですが、実際は堀内先生が米国に留学した際、自ら夜空を見上げて作詞したものだそうです。

 中に、オリオン舞い立ち、スバルはさざめく、無窮を指さす北斗の針と…と歌われているように、今頃の星空の様子で、南東の空にオリオンが立ち上がり、スバルが天頂に位置し、北東空低くには北斗が上り始め、と言ったところでしょうか。地球自転による星空の回転運動を、北極星の周りを星座は巡ると詠んだ歌を、私は完璧に名歌だと思っています。

 ところでオリオン座ですが、それをスバルが属する牡牛に盾を振り構えて刀を振り下ろす勇者オリオンに見立てるのは簡単ですが、あくまでも地球から見上げた架空のものと言うことはご存じですか?

 だって右肩を作るベテルギウスは地球から640光年、左肩のベラトリックスがたったの255光年、左足のリゲルが850光年、右足のサイフが660光年、刀の位置にあるオリオン大星雲は1500光年、三つ星の真ん中にあるアルニラムに至っては1800光年の先にあるのですよ。今は宇宙時代。宇宙に飛び出して見たら、まるで異なる形に並んでいるはずです。

 そればかりではなく、北斗の柄先のアルカイドと升先のドゥベは、中の五星とは正反対方向に運動する運動星団に属し、その五星は180度離れた方向にあるおおいぬ座のシリウスと同じ方向に運動する星団であることが判っています。つまり、太陽系はそれらに挟まれていることは明確です(第205夜参照)。しかもシリウスは、今から10万年前にはずっと南東のがか座にいたのですが、現在はおおいぬ座、10万年後にはこいぬ座を通り越してふたご座に突入します。

 決して星座はいつまでも同じではないのですね。巡るのではなく、変わるのです。

※1月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。