第241夜「ダークスター」(2016年2月5日号)
8日が新月ですから、この頃は毎日夕方空がダークですね。なので、今回も第240夜に続いてダークな話にします。今夜の主役は、ダークスター。
いえいえ、映画界の悪役ではありません。実はダークスターが宇宙の最初にいなかったら、現在夜空に見ることができる多数のスターたちはいなかったと言われているのです。
近年、銀河系周辺に大量(太陽質量の1兆倍ほど)のダークマター(ヤヤコシイですがダークスターではない)があることが判ってきました。宇宙のごくごく初期にインフレーション時代というのがあり、そのとき私たちが見ることができる様々な物質ではないダークマターが大量に作られ、均等にばらまかれました。ですが、それには重力だけが作用するので、次々と塊として成長していきました。
ちょっとだけ作られた水素やヘリウムなどの普通の物質が、その塊に引きつけられてエネルギーを貰い、重さが太陽の100万~1000万倍で明るさが太陽の最大10万倍というとてつもないダークスターが誕生しました。
やがてダークマターは影役になって周辺を取り巻くようになると、ダークスターは縮み、更に高温になったため、現在普通の星の中で起こっている原子核融合反応を開始し、各種元素が製造されるようになりました。
宇宙で最初に輝き始めた星のことを、ファーストスターと言います。今、このような天体を探し出そうと、天文学者達が躍起になっていますが、それよりも大事なことは、目に見える星(普通の物質)よりも、見えないダークマターの方が何倍何十倍も多いと言うことです。そしてそちらが先輩格でもあります。
みなさんが星空を見上げたときに、宇宙にある見えるものも見えないものも、みんな天文学的・科学的に研究されているのだということをご承知ください。
その上で、銀河・太陽・地球・生命体があることをお考えください。それらは、みんなつながっているわけですね。
※2月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。