第24夜「皆既月食を見よう」(2011年12月9日号)
10日の土曜日には、月が満月になります。先日驚いたことが一つありました。テレビ放送でアナウンサーが「今晩は綺麗な満月ですね」と言ったのです。普通ならどうと言うほどのことはありませんが、その時は月齢11日だったのです。どう見ても私には月が欠けて見えました。アナウンサー氏は、かなり目が悪くて、明るい月がボワっと満月に見えてしまったのかもしれません。
さて、10日の満月ですが、こちらもじつは普通ではありません。23時06分から23時58分までは、なんと暗くて赤い満月です。この日は皆既月食が起こるのです。満月が地球の陰に完全に入るのが皆既月食ですから、普通は、月は真っ暗になってしまうはずですが、そうはならず赤く見えます。これは、地球の周りにある大気が日光の赤い光だけ屈折させて影に入り込み、それが月を照らすからです。日光のその他の色(紫や青や緑など)は散乱されて月には届きません。
地球上のどこかで大きな火山爆発などがあると、大気中に大量の火山灰が放出されて日光が遮蔽され、月を照らさなくなり、月がどこにいるのか判らなくなるほど暗くなったりします。さらに、月に映る地球の影が丸く見えなかったり、地球の影が普通より大きくなったりと、かなり普通ではないことが起こるので、月食の時は肉眼での観察が結構重要です。
10日21時45分(部分食の始まり)から11日01時18分(部分食の終わり)まで、月食が起こる時刻は日本全国どこも同じで、しかも真夜中を挟んでいるので、晴れてさえいれば、最初から最後まで見ることができます。そして「最大食」と呼ばれる、月が影の一番深いところに達する頃が、各地とも月が最も高く昇る頃と重なり、今回の月食は観望の絶好のチャンスになります。
この次に月食が日本で見えるのは、2012年6月4日20時頃の部分月食、同年11月28日23時半頃の半影月食、14年10月8日20時頃の皆既月食、15年4月4日21時頃の皆既月食です。このうち12年11月28日のものは半影月食で、ほとんど月は暗くなりませんが、すぐそばに木星とおうし座の1等星アルデバランがあって、なかなか華やかです。
※12月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。