集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第22夜「冬の星座」(2011年11月25日号)



 ♯木枯らしとだえて 冴ゆる空より♯という歌をご存じの方はたくさんおられるでしょう。冬の寒空で観測を終えたあと、私は良く口ずさみます。堀内敬三さんの有名な唱歌ですね。♯オリオン舞い立ち すばるはさざめく♯のが、これからの季節です。寒くなりましたが、その北風の中に星が煌めく季節の始まりです。

 そんなさなか、今週末は一晩中月明かりが無く、♯無窮を指さす 北斗の針と♯に注目しましょう。北斗七星のことですね。と言っても、観望条件はかなり厳しく、午後9時頃はほとんど地平線近くの低空にいます。

 みなさんお住まいの大部分の地域では、升の4星はご覧になれるでしょうが、柄の3星は難しいかも知れません。特に柄の先端のエータ星は、見えない場所がほとんどかも。実は、北緯40度49分の青森市より北の地域では、沈まずに西天から東天にまわっていきますが、それ以南では南に行くほど長時間地平線下に沈みます。

 升の4星の内、底をつくるガンマ星は関東など北緯36度以南で、ベータ星は南九州など北緯33度以南で、いずれも一時的に沈むようになります。

 その緯度で、沈まない星のことを周極星といい、原理的にはそれからその場所の緯度を知ることができます。どの星がみなさんお住まいの地域で周極星になるか、実際の空で調べてみませんか。

 ところで、柄の先をつくるエータ星ですが、アラビア名が凄い名前、なんとアルカイダです。それが関係あるのかどうか、諸葛孔明という中国の武人は、天頂とこの星とを結ぶ線が地平線と交差する方向を凶として、決して軍隊を進めてはいけないと戒めました。

 そして、そのエータ星に破軍星(はぐんせい・はぐんじょう)という名前を付けました。その教えを忠実に守った日本の武将が、有名な武田信玄です。星名に関するお話は、ずいぶん国際的ですね。

※11月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。