集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第43夜「三日月を愉しもう」(2012年4月20日号)



 震災前は、21時といえば、東京では大通りといわず路地といわず人通りがあり、街々には煌々と灯がともり、盛り場は、週末ともなれば人で溢れていたものです。それが、震災後の節電によって街全体から華美な灯りが減って、夜空は暗くなりました。現在の私は年金生活者で、幸いにも夜は家に居られて、お金のかからない天体観測を愉しんでいますが、この夜空の暗さは、有り難く思いました。そしてそれは、私たちが、どれほどエネルギーの浪費に無頓着であったかを反省する貴重なきっかけにもなったと思います。また、光害の観点からいうと、乳ガンの発生が光害の増加と比例しているという研究もあるそうです。夜間の過剰な灯りが、たいへん不自然なものであるということを、今一度、確認すべきなのだと思います。

 さて、21日が新月です。光害は別として暫くの間月明かりがなく、暗い星空が望めます。北の空にどなたもご存じの北斗七星が、2等星の北極星の回りを、反時計回りに回転している様子が観察できます。もちろんそれは星空が廻っているのではなく、地球が回転しているのですが・・・。

 病気で長期間床に伏していた叔母が、窓から見える星が毎晩同時刻にだんだんずれていくことに気づいたことを私に語ったのを、いつも思い出します。

 月も毎晩同時刻に、形ばかりでなく位置も変えていることに気づいておられる方も、意外と少ないようです。当然それは月が地球の周りを公転し、太陽との位置関係を変えているためです。

 民間では純粋太陰暦を使用しているイスラム教国では、特に月が初めて見える(月齢1~2の)日を重視しますが、私たちの国では、特に観月という風習が強く残っているせいでしょうか、三日月にたくさんの呼称があります。私は、月の和語辞典というミョーな辞書を作り、すでに140有余の名前を収集しましたが、十五夜月の21を抜いて、三日月が23を数え、トップです。全部をここに書き上げることは出来ませんが、若月・眉月・糸月・銀鉤(ぎんこう)・月牙(げっか)・月の剣・月の舟・宵月・夕月・黄昏月などなどです。言葉の表現力が豊かな日本人らしいですね。でも、自作のバナナ月はイマイチですか?

※4月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。