集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第45夜「4日夜月・スピカ・土星接近」(2012年5月4日号)



 おとめ座のスピカは、日本で真珠星と呼ばれているように、白く美しい1等星です。おとめネックレスにふさわしい爽やかな名前ですね。また、その北側30度の場所にあるオレンジ色のアルクトウルス(日本では麦星と呼ばれる)も、うしかい座の1等星ですが、スピカよりもはるかに明るく、実はこれから夏にかけて1番星にもなります。わずかですが、真夏の女王と呼ばれるほど明るいこと座のベガ(というより織姫星のこと)よりも明るく耀きます。

 そのアルクトウルスとペアで、スピカは夫婦星(めおとぼし)と呼ばれています。色の違いを見事に表現した良い名前だと、私は思います。現代では色白の女性よりも日焼けした逞しい女性の方々が多いかもしれませんが・・・。

 まぁ、それはともかく、4日夜にはダイアナ(そうです、亡くなった英国皇太子妃の名前)とも呼ばれる月が、スピカ(原義は麦の穂)に接近します。隠すほど近づきませんが、その位置の変化にご注目下さい。スピカの北には土星もいるので、その二星に対して較べてみましょう。

 当日20時頃には土星・スピカ・月が「く」の字(そういえば女性のことを「くノ一」とも)に並んでいます。ですが、時間の流れと共に三天体とも西へと進み、翌日午前2時過ぎには南西空に傾きます。そのときには、三天体が上から土星・スピカ・月とほとんど直線状に並ぶようになり、朝の訪れと共に西の地平線下に沈みます。

 地球が廻ると共に、天体は動いているのです。スピカは遠い距離にある恒星ですから、1年や2年で位置を目立っては変えませんが、千年万年では、恒星自身の運動や銀河系の回転によって、位置が変化します。違った意味で、万物は流転(回転)しています。そして、スピカ自身も2つの星が近くで廻りあう連星ですから、主星と伴星とがお互いに公転し合い、それぞれ自転もしています。時空を超えてそのさまを思い浮かべると、自然界のダイナミズムを感じずにはいられません。

※5月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。