第48夜「宇宙に生きる」(2012年5月25日号)
今週末は夜20時半過ぎ、北斗七星が頭上高くに上っており、その見頃です。柄杓の柄の先から二番目の星が、二つに分かれて見えますか。それが有名な視力検査の星。明るい方がミザール、暗い方がアルコルです。肉眼二重星とも言われます。
同時刻頃、南の空に見える茶色っぽい星と白い星は、土星とおとめ座の1等星スピカです。土星の方が明るく見えます。21日に2星間は5度弱まで接近しましたが、今は土星がゆっくりと東の方に離れつつあります。にわか二重星でしたね。もっとも、ホントの二重星は恒星同士ですし、もっと近づかないと言えませんけれど・・・。
土星が動いていくのを毎晩見ていると、宇宙はホントに生きていると感じられます。そして、私は星や夜空を見ていると、いつも私の住所のことを考えます。私が自分の名刺に書いている住所は、巫山戯(ふざけ)たものと思われるかも知れませんが、東京都・・・ではなく、宇宙内から始まります。
最近はさらにマルチバース内・ユニバースからにしようかとも思っています。ともかく、宇宙内・おとめ座超銀河団・局部銀河群・銀河系・オリオン腕内側・太陽系・地球・アジア・極東圏・日本国・東京都・・・後は郵便局に届けたものが続きます。名刺を差し上げる方々に、宛名は全部を書かないようにお願いしますが。
月夜の晩、月を見ると、あれは一番近い天体、夕方か明け方、金星を見ると、あれは一番近い惑星、晴天の昼間、太陽を見ると、あれは一番近い恒星、そして秋の夜、アンドロメダ大銀河を見ると、一番近いものではないけれど、局部銀河群内のチャンピオンなどなど、いろいろと考えてしまうのです。
私たちは今、宇宙の中で生きています。そして宇宙に生かされています。夜空を見上げると哲学することができます。おもしろいですよ。みなさんも、宇宙内おとめ座超銀河団・・・、いかがですか。
※5月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。