第72夜「ミルカミーダ」(2012年11月9日号)
No14(2011年9月30日号)で、ちょこっとだけアンドロメダ大銀河(M31という符号が有名)と銀河系が将来衝突しますとお伝えしたことを覚えておられますか。実は最近、それがより現実的により具体的になってきており、今年の5月にはNASAアメリカ航空宇宙局からは、その想像図まで発表されました。その衝突後の天体名が、ミルカミーダです。
提案者は、アメリカのハーバード・スミソニアン天体物理学センターの二人の天文学者です。それは要するに、天の川(ミルキーウェイ)とアンドロミーダ(英語の正式発音)の合成語です。ごちゃごちゃに合成されるからそれでよいのですね。
時期は今からおよそ40億年後以降のこと。現在両者の接近速度は100~140km)恒星数約7000億個の楕円銀河が形成されると言います。おそらく、空全体が天の川で白くなるということで、要するにどこを見ても星だらけ。夜起きたら大変ですよ。寝てられません。空全体真っ白ですから。それも一晩や二晩のことではなく、毎晩どころでもなく、何億年も同じなのです。常識って時代とともに大きく変わるのですね。
それに較べると、40億年前の今は、なんとまあ静かなこと! 夜空が暗いのです。夜空が暗いのが当たり前なのです、今は。おまけに今週末から来週末にかけて、14日が新月(オーストラリア方面では皆既日食になる)で、月明かりが星の観望を邪魔せず、夕方はほんとうなら天の川が見えるくらい暗いはず。あぁ、現代に生きていて良かった!
でも一つ大きな心配があります。そのとき我が太陽系はどうなるのでしょうか? 恒星との衝突は星相互の距離がスカスカなため、免れそうですが(衝突確率10兆分の1と言われる)、心配なのは、重力効果でアンドロミーダ系外に弾き飛ばされるかも知れないのです。決して杞憂ではありません。やっぱり、現代に生きていて良かった!
※11月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。