集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第84夜「プレセペ星団を見よう!」(2013年2月1日号)



 みなさんは、星を見るためには望遠鏡がないとなぁと思っておられませんか? もちろん望遠鏡は、とても役立つ道具ですが、万能ではありません。倍率を高くするため、反対に視野を犠牲にしているのです。

 ホームや歩道でスマホやケータイ画面に見入ってそぞろ歩きをしている人を、近頃は頻繁に見かけますが、あれは危険で迷惑でいただけませんね! でも、それは人間の視野が広いから、なんとか無事で済んでいるのです。平均的に男性は120度、女性は150度だそうで、男性が狭いのは狩猟を旨としていた昔の名残、女性が広いのはチョロチョロする子育てに便利だからだそうです。視野が狭い男性はコメット・ハンターに、広い女性は流星計数観測に向いていそうですね。いや、冗談、冗談。

 ある種の天体観測に、双眼鏡は望遠鏡より役立つことがあります。私は、数十年前から口径10cmの屈折望遠鏡と反射望遠鏡(自作)を持っていますが、学生時代からやっている明るい変光星観測には、ほとんど口径5cmの双眼鏡を使っています。人間の目より集光力が遙かに勝り、望遠鏡より視野が遙かに広いからです。暗い星が見えて、明るさを比較する星が多数になるのです。

 散開星団と言えば、おうし座のプレアデス星団(すばる)とヒアデス星団が有名ですが、ふたご座としし座の間にある、かに座のプレセペ星団もよく知られており、あのガリレオが史上初めてスケッチしたことで有名なものです。ガリレオは、視野が極端に狭いガリレオ式屈折望遠鏡でスケッチしたので、たぶん相当苦労したと思われますが、みなさんは7倍程度で口径3.5cmや5cmの双眼鏡で御覧ください。星が群がっている姿に感動されるはずです。

 これがヒアデス星団と同じく5億歳だとは余計に感動ものです。それに較べてプレアデス星団は数千万歳という、まるで赤ちゃんです。双眼鏡を使って、較べてみてください。

※2月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。