集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第87夜「宇宙の生命」(2013年2月22日号)



 22日から来週28日にかけては、宵空に月ががんばっているので、ちょっと星見には向きません。おっと、すみません、ついつい便利な表現なので使ってしまうのですが、広辞苑には「宵空」という言葉はありません。それは、私がまだ東京渋谷の五島プラネタリウム(それすら今はありません・・・)で解説員だった頃、仲間内で作った新語です。ついでに星見という言葉の由来は知りませんが、これもニューフェースですね。

 でも、いくら月ががんばっていても、木星は見えますし、冬の一等星も何とか見ることはできます。季節は雨水を過ぎ、そろそろあちこちに春の兆しが、といいたいところですが、今年の冬は、ほんとうに厳しい寒さが続きますね。でも、ちょっと夜遅くになると、春の星座のおとめ座のスピカやうしかい座のアルクトゥルスが東空に上りますし、北東の空には北極星を指さす北斗七星が高く上ってきます。地上は寒くても、星空には、ちゃんと春の足音が近づいてきています。

 春と言えば、生命の季節。昨年8月にはへびつかい座の一角にある誕生したばかりの赤ちゃん星を取り囲む塵のリングの中に、とんでもないものが見つかりました。グリコール・アルデヒドという糖類の一種でした。

 なぜ、とんでもないものなのかと言えば、それが生命構成物質の一つだからです。塵の環は、将来惑星になるかも知れないもので、すでにそこに惑星も見つかっているそうです。形成途中の太陽系外惑星の近くで、生命構成物質が見つかったと言うことは、太陽系外惑星がこの宇宙にごくざらにあると考えられ始めていますから、天文学的には宇宙生命もあちこちに息づいていそうだということになります。

 いや、宇宙生命、宇宙人なんて言っていられなくなりました。生命は、今や宇宙に普遍の存在だから、領土問題で争っているのなんて、本当に馬鹿らしい。宇宙的にとは言わなくとも、少なくとも普遍的に物事や政治を考えるべきではないでしょうか。星空を見ていると、大局的な視点をもてるようになれますよ。

※2月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。