集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第94夜「地球は丸い」(2013年4月12日号)



 日本海でも結構ですが、太平洋の海岸近くに立って、あなたはアメリカ大陸をご覧になったことがありますか。もちろんハワイだって見えません。理由は簡単、遠すぎるからです。人が水平線の彼方にものを認める限界は、せいぜい十数kmまでです。自分が見ている範囲は、なんとまあ狭いことでしょう。それが限られているのは、もちろん地球が丸いからです。

 でも昔の人は、地球が平べったいと考える方がほとんどでした。なぜか? 反対側で逆さに立っている人なんて考えられなかったからです。アルゼンチンの皆さんは、いつも逆立ちしている! いいえ、あちらの人にしてみれば、逆立ちしているのは日本人だ!

 人はとかく自分を中心に物事を考えがちです。特に古代人はそうでした。世界が狭いと言ってしまえばその通りですが、例えばなぜ中国と称したのか。それは自国が世界の中心だと考えていたからです。今から3100年以上前の殷時代に、中国は中商(商が殷の首都)と呼ばれ、周辺諸国を方(西方を鬼方、東方を人方など)と言いました。だから四方なのです。

 また、世界の真ん中に高山や理想郷があるとも考え、それは様々な宗教にも影響を与えました。一方、大地の周囲は海に囲まれていると考えました。だから、遠洋航海は海の果てから落ちて危険と考えられたのです。

 ですが、この考えに真っ向から立ち向かったのが月食です。アリストテレスという人が「月食時の地球影が丸い」と言ったのです。

 私は、科学的考え方というのはこういうことだと思います。観念で議論をこねくり回すのではなく、まっすぐに事実を見て客観的データに基づいて議論しましょう。その練習に、星を見てください。なにしろ、星は万国・全人類共通のものですから、ある特定の人や民族や宗教に限定されません。占いなどについても、この点から考えるべきでしょう。

※4月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。