集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

目次

第1夜「出発進行!」(2011年7月7日号)



 3月まで私の仕事場だった各地のプラネタリウムや我が家の私設観測場で、人工のそして自然の星空を見上げたとき、私はいつも思うことがありました。それは、なぜ多くの現代人が頭を上に向けて星空を見上げないのだろうということです。根源的な疑問と申し上げても良いもので、我が日本では、時代と共にその人口が減っているとすら考えています。

 天文学だけでなく自然科学全体の問題ですが、今の日本の小学校低学年では、10人中9人以上が理科を面白いと感じていますが、高校卒業時には、10人中1人以下しか理科系に進学しません。理科教育のあり方が根本的に問われているように思えます。大人の多くの方が理科に無関心で、理科系に進むこと自体をおかしな事と考えていないでしょうか。

 地震や津波のしくみを知るには自然科学の理解が欠かせませんし、放射線や原子炉事故に正確に対応するためにも同じセンスが必要です。そして、それは、宇宙や天体を理解するためにもいえることです。

 今日7日は現行暦の七夕です。仙台市の有名な月遅れの七夕(8月7日)や旧暦の七夕(今年は8月6日:伝統的七夕)については、次の機会にお話しようと思いますが、私はこれまで何度も質問を受け、困ったことがあります。「今日の何時に織姫さんと彦星さんはデートしますか?」。私の答「残念ですが、15光年も離れているので会えませんよ」。お客様「???」。

 3月に発生し、今に続く東日本大震災は、まさに悲惨なできごとで言葉がなく、私が偉そうに言うことではありませんが、やはり人間は生きている以上、希望を持って少しでも未来に向かい進んで行かなければなりません。
 そこで、少しでもお役に立てればと考え、みなさんにぜひとも夜空を見上げていただき、これまでに人類はこんなに面白いことを宇宙で発見したのだということを、ちょっとずつでもご紹介しようと考えた次第です。
 星を見ることはタダですが、みなさんの気持ち次第で、そこには豊かな実りがあります。そして、単なるロマン心だけではなく、「何故だろう」と考えることで、その実りは、いっそう豊かになります。未曾有の自然災害に立ち向かうための勇気と知恵を、少しでも星の光から受け取っていただければ、との思いで、このコーナーをスタートいたします。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。