第3夜「アルゴルの観測シーズンになりました」(2011年7月15日号)
15日は満月です。人影ができるほどなので、星観望は困難です。でも一等星だけは何とか見えるでしょう。夜の9時、真上近くに見える白い一等星が仙台などの七夕祭りで有名な織女星(こと座のベガ)、牽牛星(わし座のアルタイル)とはくちょう座のデネブで作られる夏の大三角は、すぐわかります。
ベガから下にデネブまで直線を引き、デネブから左へ直角に(その直線の)2倍弱伸ばすと、かなり暗い2等星が見つかります。それは有名な北極星です。今の季節、有名な北斗七星は春の夕方には高くに見えた東北地方でも北西空低く、カシオペヤ座のW字は北東空もっと低く、どちらも北極星捜索には使いにくい状況です。意外と使い勝手のよい、夏の大三角からの北極星探しはいかがですか。
その夏の大三角が21日未明(午前1時50分)には、夏の大三角が西の空に周り、替わってカシオペヤのW字が北東中天に上ってくると、その右側にペルセウス座の弓なりカーブが辿れます。月がやや邪魔ですが。
そのカーブの中心に普段は2等星としてよく見える星が、相当目をこらさないと見えないことに気づくはずです。この星がアラビア人にアルゴル(悪魔)と呼ばれた、有名な食変光星で、伴星がちょうど主星の前を通り過ぎる時刻にほかなりません。
私は1965年からこれまで380回ほどこの星の極小観測をしていますが、今年は2月で観測シーズンを終えました。5ヶ月半の休憩期間を終了し、この日からシーズン開始で緊張します。なぜならこの5年間、変光周期2日20時間49分3.1秒を変えておらず、観測できない期間内に変えているかも知れないからです。
私の今年2月までの観測による予報では、今月21日1時50分頃、来月10日3時34分頃(月明かりが無く最高の条件)です。なお、雑誌や星の年鑑などには、周期要素などが古いことがあるので、要注意ですよ。
※7月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。