集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第109夜「土星観望のチャンス」(2013年7月26日号)



 近代科学最大の発明は天体望遠鏡だと言われ、それに続くのが顕微鏡と言われています。なぜなら、レンズを組み合わせただけの簡単な装置で、共に人間の視野を広げてくれたからです。しかも、いずれは宇宙の果てまで見ることができると言われるのが望遠鏡です。本当に夢を感じますね!

  その望遠鏡(1609年8月24日に初制作)を空に向けて、初めて天体を科学した人が有名なガリレオ・ガリレイです。月(1609年11月30日にスケッチ)や木星・金星などの惑星や、プレセペ星団ほかいろいろな恒星を見たり、天の川が星の集団であることを確認したりと、人類の目を輝かせてくれたのです。

  そして、現代から見れば粗末な手作り望遠鏡で土星(1610年7月26日に初観望)を見たとき、ガリレオはとんでもないものを発見しました。それは土星の「耳」でした。ガリレオの望遠鏡では、土星の環を鮮明に見ることができず、耳に見えてビックリ仰天したようです。ですが、それで事は済みませんでした。2年後(1612年12月1日)に、その耳が消えたことを知人に手紙で知らせています。そして、ガリレオは、その後二度と土星を見ることはなかったそうです。

  誰でもそうだと思いますが、自分がその目で史上初めて(確かに)見たものが見えなくなっていれば、何とも恐ろしいことが起きたと思うのが当たり前ではないでしょうか。

  でももちろん今では、その理由は明快に分かっています。土星の環は、地球から見ると15年ごとに真横から見る位置となって、厚さが百mにも満たない環はあたかも消えたようになってしまうのです。最近では2009年に、近い将来では2025年にそれが起こります。

  そして今、環はよく見えています。とはいえ、2017年頃は、かなり上から見下ろす格好になるので、まるでお皿に乗せられたアイスクリームみたいになって、あまりかっこよくないはずです。ということで、まだ、いくらかかっこよい土星の姿を、小型望遠鏡の100倍くらいで御覧になりませんか。夏は星見のシーズンということで、各地でいろいろな観望会が開かれていますので、そのようなイベントに参加して、ぜひ宵空に輝く土星の姿をご堪能ください。

※7月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。